お金で損する人・得する人

「老後2000万円」でも心もとない 資産形成は準備期間で“戦略”を練る

高橋成壽
高橋成壽

30代~40代は何をすべき?

 実は今回の金融審のレポートは、老後資産形成についても引っかかる点がある。

 レポートで推奨しているのは、長期・積立・分散投資である。長期で積立を継続することで、収益が安定してマイナスを抑えることができるようになる。投資の利回りは市況のほか、投資に関するコストが大きく影響を与えることとなる。これは、低コストの投資商品を推奨することを意味している。いわゆる、ノーロードファンド(販売手数料無料)やインデックス投信など信託報酬の低いファンドを間接的に推奨していることになる。

 しかし、30代~40代で子供がいるような家庭の場合は、老後資金の準備だけでなく、住宅購入、住宅ローン返済、教育資金の準備などがあるだろう。長期投資にばかり目を向けずに、足元に必要な資金の準備をしておかないと、手元資金が足りずに必要以上にお金を借りることになりかねない。

 具体的には、マイホームの諸費用が払えず、頭金もなく住宅ローンは住宅価格に諸費用を加えた全額を借りることになれば、金利の支払いが大きくなる。教育資金の準備ができずに、奨学金を借りれば子供の将来に返済負担がのしかかる。教育ローンを借りれば、子供に借金を負わせることにはならないが、金利負担付きの返済が長期間待ち構えている。自分たちの人生設計を考えた上で投資を行わなければ、結果として金利の支払いが増えることで、投資の収益を減らすことになりかねない。

 まずは、自分たちの人生にどんなライフイベントがあるか考えるといいだろう。ライフイベントとは、出産、入園、進学、受験、卒業、転職、昇進、起業、定年などである。それぞれのイベントが発生した時、いくらのお金が計算し、どうやって資金を準備すべきか考えると、何に投資すべきかも見えてくるだろう。

 10年以内の短期から中期の資金準備は、預貯金が最適であろう。10年から20年であれば、保険の積立も効果的だ。20年以上の準備期間があれば、投資信託など価格変動リスクのある商品を買い続けるのもいいだろう。どれか1つではなく、どれも同時並行して実行するのがよいだろう。

 心配な方は、お住まいの近くでFPを探して相談するといいだろう。FPは専用の家計シミュレーションソフトを利用しているので、比較的速やかにあなたの老後資金の必要額を計算するはずだ。あとはその金額をどのように準備すべきかを検討すればよいのである。金額がでれば、あとは準備するだけだ。日本人の苦手な実行する、行動するという段階に進む必要がでてくるだろう。

高橋成壽(たかはし・なるひさ)
高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら

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