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中国の大気汚染、日本への影響はどうなの? 専門家「持病ある人は…」
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中国の大気汚染物質が風に乗って日本に飛来し、国内でも健康に影響が出るのではないかとの懸念が広がっている。
北京市が盆地で大気汚染物質がたまりやすい上、今冬は天気が安定して汚染物質が拡散しなかったことが発生要因とされている。
PM2.5の吸引を確実に防ぐため、中国では専門家らがマスクの着用を呼びかけ、北京では一般的なマスクより割高な業務用マスクが飛ぶように売れている。
一方、大気環境学が専門の竹村俊彦九州大准教授は「(中国からの)越境汚染は今に始まった現象ではなく、増えている」と指摘した上で「汚染物質の濃度は中国の10分の1以下だが、何も心配しなくていいわけではない。濃度が高い日には、呼吸器や循環器病の人は外出を控えるなどの対策を取った方がよい」と話している。
中国で観測されている汚染された大気が風に運ばれ、アイスモンスターと呼ばれる山形・蔵王の樹氷に汚染の恐れが出ている。
1月29~30日には九州に、31日には日本海付近に到達したことがNASA(米航空宇宙局)の人工衛星MODIS画像で確認された。樹氷の汚染状況を研究している専門家は「樹氷にも汚染物質は飛来している」と指摘する。
研究しているのは山形大理学部の柳沢文孝、東北大東北アジア研究センターの工藤純一の両教授チーム。
柳沢教授らは平成3年から蔵王山頂の樹氷を採取して調査。樹氷は1600メートル以上の高度ででき、周辺に大規模工業地帯がないため、遠距離飛来の影響が反映されやすいという。
採取当初は酸性化を示すpHは平均5・6だったが、13年には4・5に。23年2月2~6日は3・2と、過去20年で最も酸性化が進んだ。4・0で生態系に影響が出るとされる。
原因は硫酸で、23年2月は硫黄の同位体比が中国東北部・山西省の石炭に含まれる硫黄と成分が一致。肺がんなどを引き起こすとされる微粒子状物質「PM2・5」濃度も通常の約10倍となった。
今冬はpHが4・0~4・5。健康被害が出るレベルではないとされるが、柳沢教授は「気圧配置など条件が重なると、一昨年のような汚染物質の大量飛来が起きる可能性がある」と指摘している。(杉浦美香)