メーカー

「これがなければiPhoneは作れない」日本企業が世界シェアで圧倒するすごい電子部品

スマートフォン生産のカギを握っているMLCC

 次に村田製作所のMLCCはどのようなものか。ひと言でいうと、信越化学工業のシリコンウエハーと同様にスマートフォン、パソコン、デジタル家電、自動車などに欠かせない部品になっているということだ。

 たとえばスマートフォンには、1台当たり約800~1000個のMLCCが使われており、端末に搭載される機能が増えれば、それにほぼ比例して搭載数も増大する。

 したがって、高性能・多機能のスマートフォンの生産は、MLCCの小型化に掛かっていた。

 そうしたなか、同社は世界最小のサイズ(0.25×0.125ミリメートル)でありながら、世界最大の静電容量を実現したMLCCを開発し、しかも同一容量の同社の従来品サイズ(0.4×0.2ミリメートル)に比べて、開発品のサイズ(0.25×0.125ミリメートル)は実装面積で2分の1、体積で5分の1の小型化に成功している。

 MLCCは、電気を蓄えたり放出したりする電子部品のことで、電子機器の電圧を安定させたり、ノイズを取り除いたりするのに不可欠な部品になっている。

次世代の自動車に欠かせない部品で世界シェアトップ

 また、現時点で既にクルマ1台に100個以上の制御用コンピューターが搭載される例が出てきているそうだが、さらに、ハイブリッド車やEV、自動運転車の場合は、高電圧の電力を制御する電子回路が多数搭載されるため、高度な電気・電子回路の多様化と増加が見込まれる。

 同社の車載用MLCCの市場シェアは50%を占め、技術開発において圧倒的に世界をリードしている。その技術と製品開発は、近未来車のアプリケーションの展開にも大きく作用するものと思われる。

 従来のクルマは高度な機械技術の集合体だった。これに対して次世代のクルマは「走るコンピューター」、つまり「半導体の塊」という全く異なる形に変貌しようとしており、これに伴って村田製作所のMLCCはさらに欠かせないものになるはずだ。なお、TDKや太陽誘電、京セラも同様のMLCCを手掛けている。

 わずか数ミリメートル角の半導体を製造するには、それに付随するシリコンウエハーやセラミックコンデンサの他にも、カメラメーカー、クリーンルームメーカー、超硬質カッターメーカーなど、東京・蒲田や東大阪などの日本の中小企業の優れた技術が欠かせないことも付け加えておきたい。(エコノミスト エミン・ユルマズ)

 エミン・ユルマズ(えみん・ゆるまず)

 エコノミスト

 トルコ・イスタンブール出身。2004年に東京大学工学部を卒業。2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了し、生命科学修士を取得。2006年野村證券に入社。2016年に複眼経済塾の取締役・塾頭に就任。著書に『新キャッシュレス時代 日本経済が再び世界をリードする 世界はグロースからクオリティへ』(コスミック出版)、『コロナ後の世界経済 米中新冷戦と日本経済の復活!』(集英社)『米中新冷戦のはざまで日本経済は必ず浮上する 令和時代に日経平均は30万円になる!』(かや書房)、『それでも強い日本経済!』(ビジネス社)などがある。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング