発端は「お家騒動」?! コクヨ・ぺんてるの提携交渉、事態は複雑化
実は以前から、ぺんてる社内ではプラスとの提携話が進んでいたという。「28年秋頃までには両社でほぼ合意していた。その後株主の反対などで立ち消えになったはずだが、(コクヨとの提携話の浮上後)いつのまにか復活した」(関係者)
ぺんてる経営陣がマーキュリアに示したプラスへの株売却額は、マーキュリアが創業家から購入した際の価格を下回っていたという。マーキュリアはこの提案を拒否。コクヨに買収を打診したが、ぺんてる経営陣の反対を受けた。ぺんてる株の売却には取締役会での承認が必要で、「プラス派」が多数を占める取締役会では不利とみたマーキュリアは、コクヨにぺんてる株を持つ投資事業有限責任組合を子会社化させるという奇策に打って出た。
真の狙いは国内!?
ぺんてると海外市場での連携を目指すというコクヨ。ただ、コクヨの狙いについて別の見方も浮上している。
文具業界に詳しい関係者は「欧米の文具市場も先細りや巨大企業による寡占化が進んでいる。コクヨがぺんてると業務提携をしても海外進出は難しい」と分析する。欧米でもペーパーレス化でオフィスや教育現場の文具需要は低下。市場縮小は避けられず、進出しても得られるうまみは少ないという。
「業界内で今回のコクヨの動きは、国内のライバル、プラスとのシェア争いの一端と見る向きが多い」(関係者)。国内1位のコクヨ、2位のプラスは激しい戦いを繰り広げてきた。プラスとぺんてるの連携を阻止し、国内市場を死守する狙いが大きいという。ぺんてる株のプラスへの売却阻止で一致したコクヨとマーキュリアが手を組み、今回の提携が実現した、ということになる。
企業買収に詳しい中村・角田・松本法律事務所(東京都)の仁科秀隆弁護士は「投資会社が取得した株の価値を最大限に高めようとした行為。一般的ではないが、違法性や株主として問題のある行為とまではいえない」とし、「コクヨへの感情的な反発はあるかもしれないが、現状ではそれぞれに企業価値を高めるため、打開策を協議していくしかない」とみている。
文具業界に起きた波乱。着地点はなかなか見えてこない。