発端は「お家騒動」?! コクヨ・ぺんてるの提携交渉、事態は複雑化
海外市場で連携へ
間接出資発表後の7月末、初めて公式の場に姿をみせたコクヨの黒田英邦社長は、ぺんてる側に通告しなかった理由を「投資会社との取り決めでお伝えできなかった」と釈明した。
コクヨの狙いは、ぺんてるの持つ海外販路とされる。昭和38年にぺんてるが発売した水性フェルトペン「サインペン」は、米国での見本市をきっかけにジョンソン大統領が愛用したとの逸話もある。これをきっかけに世界的にヒット、その後も世界で筆記具を売り続けてきた。
欧米を中心にブランドを築き、現在は約120カ国で事業を展開。連結売上高はコクヨの8分の1だが、海外売上比率は約66%にのぼる。
コクヨは、累計31億冊以上を販売している「キャンパスノート」が代表的な商品だ。海外では企業買収などでアジア7カ国に事業展開するが、主力のノートは輸送コストの高さ、ページ数やけい線など国ごとの形式や趣向の違いなどから浸透しにくく、海外売上比率は約7%にとどまる。
黒田社長は「国内市場が厳しいのは文具メーカー共通の課題。先方(ぺんてる)にもプラスになる関係を築くのが大前提だ」とラブコールを送る。
ぺんてるは今月24日、取締役会で、コクヨが子会社化した組合から、ぺんてる株を直接取得することを承認した。
ただ、同社広報は「ようやくコクヨと協議をする環境が整っただけで、業務提携をするかしないかは白紙の状態」と依然、つれない態度を見せる。
岩井コスモ証券のアナリスト、清水範一氏はぺんてるがコクヨとの業務提携に消極的な理由について「最大手のコクヨに主導権を握られるかもしれないという警戒心があるからではないか」とみている。
「お家騒動」が発端
ぺんてる株をめぐる今回の騒動。事の発端は、関係者によると、平成24年に起きたぺんてるの「お家騒動」にさかのぼるという。
創業家出身の前社長が取締役会で、役員定年を超えた数人の役員の退任を求めたところ、逆に業績不振を理由として前社長の緊急解任動議が提出された。
動議は可決され、前社長は退任。そして、同社で技術畑を歩んできた生え抜きの和田優・常務取締役が後任の社長に就任した。
前社長は社長復帰を目指し筆頭株主として活動を続けたが、支持が広がらず断念。昨年3月、自身が保有していたぺんてる株37%をマーキュリアインベストメントに売却した。マーキュリアはぺんてるに社外取締役を派遣。ぺんてる経営陣からマーキュリアに対し、保有株のプラスへの売却提案があった。