「暗闇(よる)に照らされよう。」
そんな仕事帰りのジョギングムーブメントにピタリと照準を合わせたのが、「アディダスナイトジョガー」です。なんといっても特徴は「夜光る」こと。アディダスの3本線はもちろん、デザインの随所に上手くリフレクターを取り入れ、ピカピカと光を反射し目立ちます。
コンセプトも「暗闇(よる)に照らされよう。」というキャッチ-なもの。夜のジョギング時に自転車や自動車の光を反射して安全を保つということもさることながら、純粋にカッコイイ、自分の気分も上がるというファッション目線での提案性の比重が大きいかもしれません。発売時のプロモーションもサウンドクリエイターを起用してオリジナルのライブストリーミング配信や音楽イベントなど、もっぱらファッショナブルなものでした。ファーストモデルは即完売だったとのことです。
「スポーツ」「ファッション」の同軸で戦う
それにしても、アディダスやナイキ、プーマ、アンダーアーマー、ニューバランスなどスポーツブランドのマーケティングというのは独特だなといつも感じています。つまり、どのブランドも「機能」と「ファッション性」という同じ2軸で戦っていて、独自のポジショニングで勝負するブランドをほとんど見かけないのです。
第1軸は必ず機能(パフォーマンス)軸です。トップアスリートを契約選手として抱え、サポートし、自社製品の性能を保証していますし、最近はハイテク素材を活用するなど一般向けの製品も年々ハイパフォーマンス化しています。そして、第2軸目ではどのブランドも必ずファッション要素を訴求していることです。今時、昔の体操服のようなデザインのスポーツブランドはどこにも存在しません。どのブランドも、ひと昔前ならプラダスポーツなどハイファッションブランドのスポーツラインと言ってもおかしくないほどのデザイン品質を今や実現しています。
ブランドごとの個性があるとすれば、そのファッション性の世界観に個性が少しずつあるところでしょうか。中でもアディダスは、DJやラッパーに愛用されていることからも、ナイトシーンやクラブムーブメントを意識したトレンドセットに強みがありそうです。最近では、トレンドを反映させたファッションライン「アディダスオリジナルス」で、日本のポップアーティスト田名網敬一とコラボし、なんとブランドのロゴマーク自体を遊んでしまうというとてもファンキーな展開をしており、アディダスらしいところです。