「もっと遅い自動車を」という提案 高齢者の免許を取り上げるだけで事故は減らせるのか
配信元:PRESIDENT Online 更新軽量でスピードの出ない電気自動車
それでは、より人間を中心にしたコンパクトシティを走る自動車は、どのようなものになっていくのでしょうか。ここで僕が進めている超小型モビリティプロジェクト「rimOnO(リモノ)」を紹介させてください。rimOnOは軽量でスピードの出ない電気自動車です。最高時速は45km。外装は布やウレタン(スポンジ)を使っています。
自動車の安全性を語るときはどうしても被害者側の視点で考えがちですが、加害者側の視点を持つことも非常に大切だと考えています。自分が安全に守られるということは、それだけ他人を傷つけてしまう可能性とセットになっているということを忘れてはいけません。
rimOnOを、ゆっくり走り、小さく軽く、外装に柔らかい素材を用いる自動車としてデザインしているのは、道を歩いている人への危害感を最小限にしたいという意図があります。ぶつかられたときに安全であるだけでなく、ぶつかったときにも、より安全な自動車であることによって、走れる範囲が広がるとするならば、プロダクトを工夫することによって街というインフラの運用を工夫することになります。
もちろん僕は「rimOnOこそが唯一の正解だ!」と思っているわけではありません。自転車と自動車の間には、都市部、郊外、限界集落など環境によって、あるいはそれぞれのユーザーの置かれた状況によって様々なモビリティの可能性があり、まだまだそのニーズに応えられていないのが現状だと考えています。
普及の鍵を握る「運用」の問題
こうした新しいカテゴリーの自動車が普及していくためには、運用をセットで考えていくことが大切です。人類が20世紀をかけて車中心で作りあげてきたインフラを本当にすべて作り変えるとすると、21世紀の100年をまるまる費やさなくてはならないでしょう。もっと変化のスピードを速めていくためには、すでにあるインフラをベースにして、その運用を工夫することが鍵になると僕は考えています。
たとえばイギリスの首都ロンドンでは「コンジェスチョン・チャージ(混雑課金)」という仕組みが採用されています。これはロンドン市内の渋滞を緩和するため、特定の時間帯に都心部に乗り入れる利用者には一定の金額を支払わせるというもので、実際に交通量は減っていると見られています。