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パナソニック技術者ら“第2の人生” 大阪にアイリスオーヤマ開発拠点
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アイリスオーヤマの大山健太郎社長(右)から辞令を渡される中途採用者=7日午前、大阪市北区(松永渉平撮影) 日用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市)が家電事業に本格参入するための研究開発拠点が7日、大阪市内でオープンした。家電不況をチャンスととらえ、パナソニックやシャープなど関西の電機メーカーの退職者など20人程度の技術者を採用。今後も優秀な技術者の獲得を目指す。日の丸家電を支えた技術者たちの“第2の人生”がスタートする。
「家電発祥の地は大阪。われわれが目指すものづくりのスキルを持つ人が圧倒的に多い」
大阪・梅田の大阪駅前第4ビル。従来の営業拠点をリニューアルした商品開発拠点「大阪R&Dセンター」の7日の開所式で、アイリスの大山健太郎社長はこう意気込んだ。
開所式には中途入社の技術者9人も出席。パナソニックを早期退職して入社した真野一則さんは取材に対し、「これまで手がけてきた家電の使いやすさ、ユニバーサルデザインのスキルをアイリスでもいかしたい」と抱負を語った。
デジタル家電の不振や韓国メーカーなどとの競争激化から、電機大手は軒並み業績が悪化。シャープは希望退職を募集し、昨年12月までに2960人が去った。パナソニックも希望退職を募っている。
実はアイリスの創業の地は大阪だが、石油ショックを機に大阪の本社をたたんで工場のあった仙台に拠点を移した。
プラスチック製造からスタートしたアイリスは「消費者目線」にこだわった生活用品を開発してきた。主要販路であるホームセンターの成長鈍化で売上高が伸び悩む中、新たな収益源として目をつけたのが、21年に参入した家電分野だった。
LED(発光ダイオード)照明、IHクッキングヒーター、扇風機、掃除機…。電機大手が志向する機能性ではなく、消費者目線に立った使い勝手の良さを追求した白物家電を自社開発。手ごろな値段で供給したことも消費者に受け入れられ、急成長してきた。
アイリスの家電部門の売上高は法人向けLED照明を除き、当初の16億円から24年は165億円と10倍強に膨らんだ。国内向けを中心に25年は300億円とさらに倍増させる計画だ。
これまで宮城県角田市に研究開発拠点を置き、中国の自社工場で生産してきた。業容拡大に伴って、家電技術者の中途採用を増やしてきたが、勤務地の不便さがネックとなり人材確保が難しくなっていた。
大阪で採用した技術者は順次、角田市の拠点で3カ月間の研修を受けている。大阪R&Dセンターは計17人の陣容で本格的な体制に入る。大山社長は「大気汚染物質PM2・5対応の空気清浄機と加湿器を、このR&Dセンターから商品化したい」と語り、ニーズ獲得に意欲を見せた。
国内の白物家電市場は日系大手を中心に参入メーカーが限られている。関西の大手電機メーカー退職者たちが、「受け皿」となったアイリスでどういったアイデア商品を生み出すのか、目が離せない。