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二刀流のドコモ「メディアスW」 国内初の折りたたみスマホで勝負!
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ドコモの2画面スマホ「メディアスWNー05E」 NTTドコモが今月中旬に発売するスマートフォン(高機能携帯電話)「メディアスW N-05E」(NECカシオモバイルコミュニケーションズ製)は、国内で初めて2つの画面を持つ折りたたみ式のスマホだ。
1枚の画面で検索をしながら、もう1枚の画面でメールをするなど“二刀流”で使えるほか、動画再生の際には2枚の画面を並べ大画面で鑑賞するなど、使い方のバリエーションはさまざま。スマホのデザインが均一化する中、新機軸を打ち出し、ヒットを狙う。
「これ、本当に売れるの?」「まあ、面白くはあるけど…」
「両画面スマホ」の構想が持ち上がった約1年半前、考案したNTTドコモプロダクト部第1商品企画担当のメンバーらは、社内各部署からこんな疑問を浴びせられた。
それもそのはず。液晶画面を直接タッチして操作するスマホでは、従来の携帯電話のように画面と操作ボタン部分を分割する必要がない。だからこそ現在は、機体を2つ折りしない「ストレート型」が主流だ。
それをあえて折りたたみ式にし、表も裏も液晶画面にする。例をみない挑戦に異論も強かったが、企画担当の山崎仁史さんらは「画面が大きくて困る人はいない」「スマホの利便性が格段に広がる」と粘り強く主張。半ば見切り発車的に商品開発をスタートさせた。
メディアスWは4・3インチの液晶パネルを表と裏の両面に搭載。折りたたみ部分を広げれば2つの画面が並び、タブレットに近い5・6インチの大画面となる一方、閉じれば裏画面が自動的に停止し、1画面の通常のスマホと同じように使える。
両画面をつなげた際にも、文字や図面を拡大・縮小するピッチイン・アウトや、画面を上下させるスクロールが、通常のスマホと同様にスムーズに動くのが特徴だ。
海外では過去に画面を内側にしてたたむ両画面スマホはあったというが、今回のように外側に折る「さば折り型」は世界初という。内折りだと、着信やメールがあるたびに機体を開かねばならず、「通常のスマホより使い勝手が悪くなる」(山崎氏)ことから、ドコモは外折りにこだわった。
開発のポイントとなったのは、両画面を結節するヒンジ(ちょうつがい)と、画面の強度、本体の薄さの3点だ。
ヒンジは、従来型の二つ折り携帯では直径9ミリ以上が主流だったが、NECカシオによる技術改良で、強度を維持しつつ5ミリまで小型化することに成功。ヒンジの小型化で、両画面を並べた場合の接続部分は狭くなり、画面間の「断絶」を小さくできた。
画面には米コーニング社の特殊強化ガラス「ゴリラガラス」を採用。さらに画面周囲のプラスチック部分を画面より0・1ミリ厚くすることで、スマホを机や床に置いても画面が直接触れないよう配慮した。
「画面が2倍だからといって、厚さも2倍では誰も持ち歩かない」(山崎氏)ため、内蔵する半導体の位置などを工夫し、本体の厚さは12ミリと現在主流の8~10ミリと遜色のない範囲に抑えた。
検索、メール、地図、文字入力、音楽再生、動画鑑賞、ゲーム、各種決済…。2画面を使って同時進行できる「タスク」の組み合わせはさまざまだ。それだけにドコモは「ITに関心の高いビジネスマン層の興味を引きそうだ」(同)と期待している。
ドコモは現在、国内最多のユーザー数を維持しているものの、通信会社を変えても同じ番号を使える「番号持ち運び制度(MNP)」では毎月のように転出超過が続き、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」で販売攻勢をかけるKDDI、ソフトバンクモバイルの前に苦戦を強いられている。
長方形でタッチパネルという「アイフォーン型」スマホが市場を席巻する中で、「タブレットとスマホの中間」(永田隆二・第1商品企画担当課長)という新たなジャンルを提唱し、活路を見いだそうとするドコモ。その先兵となるメディアスWが、どれだけユーザーに浸透するのか。これからが本当の勝負だ。(渡部一実)