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アイテム商法のツケ…ソーシャルゲームに陰り 2強に活路あるか
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急拡大を遂げてきたソーシャルゲーム業界が、曲がり角にさしかかっている。2013年度の国内市場は12年度見込み比で10%増にとどまり、成長ペースに急ブレーキがかかる見通しだ。
携帯電話ユーザーにゲームが浸透するにつれて需要の拡大余地は狭まり、廃止したアイテム商法「コンプリートガチャ(コンプガチャ)」に代わる収益源の不在も響く。頼みの綱となる海外事業もディー・エヌ・エー(DeNA)、グリーの大手2社がともに黒字化が遅れるなど、先行きの不透明さが増している。
「ご心配とご迷惑をおかけし、大変申し訳ない。経営陣、社員一同、同じ間違いを犯さないように一層努力したい」
グリーの田中良和社長は12日、12年10~12月期連結決算の発表会見で陳謝した。同社は1月上旬、未成年者に対して設定していた課金の上限額を上回る請求をしていたと公表。当初、対象者は延べ733人で超過分の請求額は2811万円としていたが、その後、対象者は5544人、請求額は4937万円に拡大した。
健全性をめぐる対応は後手後手の感が否めない。12年には、ゲームで獲得したアイテムを競売サイトなどで現金化する「リアル・マネー・トレード」やコンプガチャが問題化し、各社はコンプガチャの自主廃止を余儀なくされた経緯がある。厳しさを増す業界への視線はボディーブローのように業績にも響く。
国内市場の成長鈍化は著しい。矢野経済研究所によると、13年度は12年度見込み比10%増の4256億円と拡大を維持する見通しだが、10年度の約3.8倍、11年度の約2倍、12年度見込みの37%増と、年を追うごとに伸び率は縮小している。
グリーの10~12月期連結決算は売上高が前年同期比5%減の394億円、本業のもうけを示す営業利益が37%減の142億円と減収減益だった。新作の投入が遅れており、13年6月期の連結最終損益も前期比23~35%減の310億~370億円と、従来予想の460億~520億円から大きく下方修正した。
厳しさを増す国内の収益環境を補うため大手2社が注力しているのが、海外需要の開拓だ。
DeNAは11年7月に英語版と中国語版のソーシャルゲームを始め、12年2月には韓国語版も投入。中国の交流サイト(SNS)「人人」、韓国系のネクソングループと提携し、需要の掘り起こしに努めている。
海外でのヒット作を国内に持ち込む「逆輸入」も進めている。12年5月に英語圏に投入したロールプレーイングゲーム「ブラッド・ブラザーズ」は11月に米国で売り上げランキング1位となり、13年1月に国内でもスマホ向けに配信を始めた。
一方、グリーは12年6月、米ロサンゼルスで開かれた世界最大規模のゲーム見本市「E3」に初めて参加。7月にはカナダの子会社設立を発表し、韓国への本格参入も果たした。
だが、海外事業の黒字化は「1~3月期より先」(DeNAの守安功社長)、「今年度中の黒字化は見えていない」(グリーの秋山仁コーポレート本部長)と、めどが立っていない。海外勢との競争も激しく、コストを抑えながらゲーム課金収入を拡大するのは容易ではない。
矢野経済研究所は「文化や言語、風習の違いを理解し、コンテンツをいかに現地化できるかが重要だ」と指摘する。「ゲーム開発者の争奪戦も世界規模で起きている」(業界関係者)といい、海外事業が収益を支えるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。(米沢文)