海外情勢

「国中停電してしまう」グレタさんから距離を置くドイツの“大人の事情” (2/3ページ)

 ■環境活動家を政治家がサポートし、その背後には…

 ただ、これまでは、CO2削減が人類としての最大の目標とする欧米の主要国の政治家(最先鋒がEUの欧州委員会と米国の民主党の一角)が、活動家の主張を正論とし、その主張や行動をあまり精査せず、一括にサポートしてきた。その背後に、CO2削減で儲(もう)けようとする大資本がずらりと控えていることは疑うべくもない。

 そして、国際環境活動家はいわば実働部隊であり、それにお墨付きを与えているのが国連の事務総長や一部の研究者という構造だ。そして、ここ数年、多くの国民がこの運動に賛同した結果、「気候危機説」はどんどん盛り上がった。この裏に潜む壮大なカラクリについては、12人の共著である『SDGsの不都合な真実 「脱炭素」が世界を救うの大嘘 「地球温暖化」でいったい誰が儲けているのか』(宝島社)に詳しい。ぜひとも参照されたい。

 そのうち西ヨーロッパでは、「地球環境正義」のような雰囲気までもが形成されていった。COP26の期間中、グラスゴーでSUVなど大型ガソリン車のタイヤの空気が抜かれるなど嫌がらせが多発したと、複数のメディアが報道しているが、ドイツではそんな事件はたいして珍しいことではない。環境を思う気持ちに駆られた人たちが、環境を破壊していると思われる人に鉄拳を下すのは正義であるという思い込みが横行しているのだ。だから、SUVなどは夜中には路上駐車しない。

 ■なぜトゥンベリ氏はCOP26を欠席したのか

 とはいえ、今回、何かが変わったと感じているのは私だけではないはずだ。「気候危機説」は今もなお燃え盛っているが、シャーマ議長が言ったのとは違った意味で、「流れ」が変わり始めている。まず、大きな違いは、トゥンベリ氏がCOP26に参加していなかったこと。

 前回のCOP25は、2019年12月にスペインのマドリッドで開催された(2020年はコロナで中止)が、当時のトゥンベリ氏をめぐる大騒動を覚えている読者は多いと思う。その前年、米タイム誌に「世界で最も影響力のある未成年25人」の一人に選ばれていた彼女は、2019年9月、ニューヨークの国連本部で開かれた気候変動サミットに招かれた。

 ただ、飛行機に乗ってCO2排出に加担することを潔しとせず、ソーラーパネルと水中タービン発電機を備えたヨットで英国からニューヨークへ渡ったことは、日本でも大きく報じられた。米国に到着後はヨットをヨーロッパへ戻すために数人の乗組員が飛行機でニューヨークへ飛び、船長は飛行機で帰国したという。この後、彼女の国連でのスピーチの強烈さ(“How dare you?”)が世界中で注目され、グレタ・トゥンベリという名前を一躍有名にした。

 ■「私たちの目を覚まさせてくれてありがとう」と絶賛

 そして、その3カ月後のCOP25。ここにも招待されていたトゥンベリ氏だったが、開催地が突然、チリからマドリッドに変更になったため、移動が困難となった。世界に向かって救いを求めたトゥンベリ氏に、最初、スペイン環境保護相が援助を申し出た。スペイン政府は、COP25を成功させるためには、トゥンベリ氏の名前が効果的と見たのである。

 ただ、実際には、オーストラリアのブロガー2人の計らいで再びヨットが用意され、トゥンベリ氏はヴァージニアからリスボンに渡った。航海には英国のプロの女性ヨット操縦士が同行し、その一部始終がYouTubeで流された。

 この一連の成り行きには、さすがに顔を顰(しか)める人も多かったが、彼女は「飛行機に乗るのは恥」だと言い切った。ドイツメディアはというと、トゥンベリ氏への絶賛を惜しまなかった。彼女はさまざまな賞を受けたし、メルケル氏をはじめ、多くの政治家がその行動力を褒め称え、彼女の後に続いて地球の環境問題に取り組もうとする子供たちを力づけた。

 いや、ドイツだけではない。欧米の何人もの政治家が、トゥンベリ氏のスピーチに「感動」し、「私たちの目を覚まさせてくれてありがとう」と感謝した。さらには、子供たちが金曜日に学校へ行かずにデモに参加するのを大目に見るどころか、親や教師までがそれを支援したのである。

 緑の党も、トゥンベリ氏、およびドイツのFridays for Future運動を応援した。そのうち、応援すればするほど支持率が上がるという現象に感銘を受けたのか、最後には、「選挙権を現在の18歳より16歳に変えよう」と言い出したほどだ。

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