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沈む中国の自動車市場 減税・補助金の“カンフル剤”で副作用も (2/2ページ)

 中国政府は今年、世界最高水準の厳しい排ガス規制の導入を前倒しした。新規制の「国6」は、従来基準の「国5」に対し4~5割の大幅な性能向上を求める内容。まず20年7月に第1段階の「国6a」、23年7月により厳しい「国6b」を適用する計画だったが、主要都市で「国6a」の導入が1年早められ、上海や広州など一部の大都市では「国6b」の適用が4年も前倒しされた。

 北京の冬の風物詩とも揶揄され、社会問題化している深刻な大気汚染への対策のようだが、急な規制強化の前倒しは当然、混乱を招く。新排ガス基準を満たしていない車は敬遠され、政策導入時期の急な変更で疑心暗鬼になった消費者は新車購入を手控える。

 欧米の厳しい排ガス規制への対応で「国6」対応が進んでいた日本車に対し、割を食ったのが景気減速と政策変更の“ダブルパンチ”の直撃を受けた地元の中国メーカーだ。

 苦境は数字にはっきりと表れている。中国ブランド車の1~8月期の乗用車販売は前年同期比19.5%減と落ち込み、市場シェアも3.5ポイント減の38.9%と4割を切ってしまった。EVなど新エネルギー車の販売が7月に2年6カ月ぶりに減少に転じ、8月も2桁減となったのも、政府が購入補助金を最大5割減らしたためだ。

 そもそも中国政府は、景気浮揚策で、経済成長への波及効果の大きい自動車産業に、たびたび減税や補助金の「カンフル剤」を打ってきた。意図的に需要を作り出しては、環境問題が浮上するとナンバープレート制限や排ガス規制強化で需要を抑える。強引なアクセルとブレーキの市場管理を繰り返してきた。

 新車の普及期は、旺盛な購入意欲が需要の反動減など政策の副作用を吸収したのだろうが、今の市場の風景は、それなりの車を作れば売れる、右肩上がり時代の終焉を示している。

 年間販売が米国の約1.5倍の約2800万台にまで膨れあがり、環境規制も強化された市場は欧米の先進国に近い構造に変質。投資体力や技術力に劣るメーカーは淘汰される弱肉強食の時代に突入したようだ。(池田昇)

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