ソウルで開催中の日韓経済人会議は25日、両国の政府に対し、「企業協力の障害にならないよう、適切な措置が講じられるよう強く要望する」と早期の日韓関係改善を訴える共同声明を採択し、閉幕した。関係が悪化して以降、初めての財界人同士の会議では、共同で海外事業発掘に取り組むべきだとの建設的な意見も相次いだ。だが、日本の経済界は政府に直言しづらい事情を抱え、韓国経済界も政権との距離を図りかね、先行きは予断を許さない。
共同声明では「両国の政治・外交関係は出口のみえない極めて厳しい状況」と懸念を示した上で、「政治・外交関係の修復が必要」との認識で一致した。会議終了後に会見した日韓経済協会の佐々木幹夫会長(三菱商事特別顧問)は、「今回の対話の成果を日本政府にも説明する」と強調した。
ただ、日韓関係悪化の根幹ともいえる、いわゆる徴用工訴訟をめぐり、1965年の日韓請求権協定で「過去と未来の賠償は解決済み」との政府方針を支持する姿勢で、これと切り離して政府に関係改善を求めづらい事情がある。
しかも、文在寅政権と対話ができる韓国の経済団体とのパイプは先細りつつある。
経団連は韓国経済団体の全国経済人連合会(全経連)と11月に協議を予定通り開催するものの、全経連は前政権との癒着や献金が批判され、サムスングループをはじめ上位の財閥がそろって脱退。往年の韓国最大の経済団体の面影はない。
代わりに政府の経済外交に同行し、官民協議会で重用されるのが、中小企業の会員も多い大韓商工会議所だ。ところが、日本商工会議所との定期会議は昨年11月の予定が延期され、開催めどは立たない。政権と近くなった結果、日本と交流しにくい事情もある。
日本企業は「新規ビジネスをやること自体が難しい」(古賀信行・野村ホールディングス会長)状況で、会議でも「韓国の国産化が進めば、素材分野でも脱日本が進みかねない」と危機感の表明が相次いだ。