政府は、日本の安全保障を揺るがすようなサイバー攻撃を受けた場合に反撃するとして、防衛省でコンピューターウイルスを作成、保有する方針を固めた。相手の情報通信ネットワークを妨害するためのウイルスを防衛装備品として保有するのは初めて。インターネットがつくり出すサイバー空間における新たな対処策となる。2019年度内に作成を終える。政府筋が明らかにした。
ウイルスは「マルウエア」と呼ばれるソフトの一種。通例、攻撃側が不正アクセスやメール送信により相手方に送り込み、重要情報を盗んだり機能障害を起こさせたりする際に用いられる。反撃能力を備えることで、攻撃自体を思いとどまらせる抑止力の向上につなげる狙いもある。ただ、使い方によっては専守防衛逸脱の懸念も出そうだ。
防衛省は例えば、政府機関や自衛隊の陸海空のネットワークシステムがサイバー攻撃を受け、部隊運用に支障を来すような事態を想定。ウイルスによる反撃で相手の軍のシステム利用を妨げ、陸海空による攻撃をさせにくくすることを狙うとみられる。機密保持の観点から、具体的な手法は明らかにしていない。
関係者によると、ウイルスは最新の技術力を持つ複数の民間企業に委託し、共同で作成してもらう。「バックドア」という攻撃側のシステムに侵入を図るため、ネットワーク上に「裏口」を設けることができるソフトなどが検討されている。