ダリットへの差別撤廃を求める団体「SKA」によると、下水管の中に充満したガスによる中毒死など、清掃中の事故で昨年は少なくとも93人が死亡した。労働者の7割が何らかの感染症にかかっており、平均寿命も一般の人たちより短いという。
取り組みが評価され「アジアのノーベル賞」といわれるマグサイサイ賞を2016年に受賞したSKAのベズワダ・ウィルソン議長は「事故が起きれば政府は対策に乗り出す構えを見せるが、実際は何もしない。補償金も支払われず、使い捨ても同然だ」と憤る。
ロボットで現状改善
一方、ビジネスを通じて現状を変えていこうとする若者たちもいる。南部ケララ州で15年に設立されたジェンロボティック・イノベーションズ社は、下水道を清掃し汚物を回収できるロボットを開発。昨年2月には、同州政府が清掃現場での導入を決めた。
同社を運営するのは、州内の大学で機械工学を学んだ20代の若者4人だ。その一人、アルン・ジョージさんは「学生時代、マンホールの中で清掃作業中の3人が死亡する事故があった。危険で過酷な労働環境をなくす機械を作れないかと、仲間と開発に乗りだした」と話す。