インド、カースト制度の影 ガス中毒などで下水清掃員の死者続出 (1/3ページ)

素手のまま下水道の清掃をするディラワル・シンさん(中央)ら=2018年11月、ニューデリー(共同)
素手のまま下水道の清掃をするディラワル・シンさん(中央)ら=2018年11月、ニューデリー(共同)【拡大】

 インドで、素手のままトイレや下水道の清掃に当たる労働者の死亡事故が相次いでいる。不衛生で危険な環境下での作業による死者は毎年後を絶たず、近年は増加傾向にあるという。素手で排泄(はいせつ)物を処理する労働は法律で禁止されているが、野放しになっているのが現状で、政府の対応も鈍い。背景には、カースト制度に基づく、人々の「不浄」への意識がある。

 「ほかに仕事ない」

 ニューデリー郊外の住宅地。ディラワル・シンさんが、仲間と2人でマンホールの蓋を開けると、鼻を突くような異臭が放たれた。中には排泄物などが混じった汚水が流れる。「ここが仕事場だ」。シンさんは顔をしかめた。

 竹の先端に布を巻き付け、下水管に入れて詰まりを取り除く。汚物をかき出すのは手作業だ。汚水に入って作業をすることもある。シンさんは「1日の稼ぎは200ルピー(約320円)ほど。病気やけがが怖いが、ほかに仕事はない」とため息をついた。

 こうした労働者はインド全体で少なくとも30万人以上いるとされ、行政機関や住民から依頼を受けて清掃作業を行う。労働者の大部分は、カースト制度の最下層で不可触民とされた「ダリット」の人たちだ。人間の排泄物も、それを処理する人も「汚いもの」として忌み嫌われ、ほかの職に就く道は実質的に閉ざされている。

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