【中国電子マネー事情】(上)支払い難民発生…「キャッシュレス社会」の光と影 (2/2ページ)

上海市内のバス停脇でキャッシュレス支払い用に2種類のQRコードを掲げた焼き芋の屋台。左側の青は「支付宝(アリペイ)」、右側の緑は「微信支付(WeChatPay)」(河崎真澄撮影)
上海市内のバス停脇でキャッシュレス支払い用に2種類のQRコードを掲げた焼き芋の屋台。左側の青は「支付宝(アリペイ)」、右側の緑は「微信支付(WeChatPay)」(河崎真澄撮影)【拡大】

 スマホを中心に7億5000万人ものネットユーザーを抱える中国。中央銀行の中国人民銀行が年末にまとめた2017年7~9月期の国内モバイル決済額は前年同期比39.5%増の49兆2600億元(約837兆円)に上った。決済件数は46.7%増の97億2200万件という。企業間の決済なども含まれるため単純にスマホ決済のみと言い切れないが、ネット総人口で割れば3カ月の間に1人平均で13回近く、パソコンやスマホによる決済を行った計算になる。

 IT企業に革新的発想

 中国ではそもそも個人信用を重視するクレジットカードが普及しておらず、支払いと同時に口座から引き落とされるデビットカード型の金融サービスが先行した。そこにアリババなどが目を付けて、カードの代わりにスマホ、専用回線の代わりにネットを使って決済を行うシステムを作った。レストランなどが争って採用したことに加え、日本でも知られるシェア自転車など新たな消費者サービスを生む金融インフラにもなった。

 中国の都市部では、消費者をめぐるありとあらゆる商品やサービスの代金の受け渡しが「現金お断り」に転じ始めた。ネット金融への規制や法整備がゼロに近かったことが、IT企業に革新的な発想で決済システムを作り上げる環境を与え、それを人民が熱狂的に受け入れた。

 だが、中国国内に銀行口座のない観光客など外国人はサービス対象外。中国で実名登録したスマホも欠かせない。さらに中国人でも、スマホのない高齢者や農民が“支払い難民”になりつつある。決済機能を悪用した事件も頻発。キャッシュレス社会の光と影が浮かび上がる。(上海 河崎真澄)