「親日国カンボジア」での日本企業のマズい現状 海外勢に負け始めた理由 (3/4ページ)

 「荒っぽい」ことをしない/できない日本企業

 A氏によれば、イオン2号店のように、大型の不動産開発案件を他国企業に取られてしまう事例は決して少なくないという。カンボジアに限った話ではなく、JICA主導のODA案件でさえ、日本企業が受注できないという状況がそこかしこにあるそうだ。

 「統計を見ると、カンボジアへの直接投資の量は中国が圧倒的に多い。次いで、韓国、マレーシア、英国、ベトナム、米国、日本と続いています。とはいえ、日本企業がカンボジア現地で勝てない理由は、そのようなマクロな要因だけではありません。中国や韓国企業は賄賂や接待などを駆使して、手段を選ばず仕事を取りに来る。例えば、政府高官に高級車を贈る、海外に連れていって接待する、といった話は珍しくありません。彼らにとっては結果がすべてなんです。一方、日本企業は、そうした荒っぽいことはあまりしません。結果、政界に太いパイプを作ったり、現地の細かい情報を集めたりすることができず、競争に負けてしまう」(前出、A氏)

 一方、カンボジアに進出している韓国系物流企業と親交の深い、日系大手企業の関係者S氏は、日本企業の内部状況について次のように指摘する。

 「特に日本の大企業では、賄賂や過度な接待など現地のグレーな商習慣を避ける傾向が顕著です。表向きには『コンプライアンスの遵守』や『クリーンな仕事をしたい』という企業全体の方針ですが、実際には言い訳ですよ。つまり現場の人間たちは、時間や予算をかけるなど、自分が深くコミットしたプロジェクトが失敗するのを怖がっている。個人として責任を取りたくないんです。しかも日本の企業は、成功した際の個人の評価も曖昧。そんな“大企業病”が、カンボジアでも見え隠れしています」

 S氏によれば、「90年代にカンボジアに進出した大手商社の第一世代には、現在の中国や韓国勢に負けず劣らず、現地に食い込んでいく日本人ビジネスマンも少なくなかった」という。しかしここ数年では「その手の働き手がめっきり減った」のだそうだ。

 「現在、60~70歳代になる元日系企業駐在員の現役時代の話を聞くと、接待や賄賂は当たり前で、いくつかプロジェクトに失敗しても、大きな商談を決めさえすればチャラになるという風潮があったようです。きっと、時代的な違いもあるのでしょう。それでも、結果を出すということにこだわるスタンスは必要。それが失われてしまえば、今後も海外勢に負け続けるしかありません」(前出、S氏)

リスクをおそれて中韓企業に負ける