【視点】米政権の対中通商圧力 「恫喝」で知財侵害を阻めるのか (3/3ページ)

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 232条は、輸入が安全保障を脅かすと認定すれば、大統領の権限で輸入を調整できる法律だ。1980年代には、これをかざして日本に工作機械の輸出自主規制をのませたこともあった。だが、今回は、6月末の予定だった232条の調査報告が大幅に遅れており、手詰まり感が強まっている。

 それはなぜか。そもそも鉄鋼と安保を結びつけることに無理がある。この理屈が通るなら、各国は同じ理由でさまざまな米国産品を締め出す報復措置を取るだろう。米自動車業界などが輸入制限に反対している現実も、当然ながら無視できない。

 最近は232条ではなく301条で鉄鋼を扱うべきだという議論まであるそうだ。それほど米国の政策は不確実性が高い。

 では、国際社会は米国にどう向き合うべきか。まずは、中国の不当な制度や商慣行が明確になっても、米国独自に制裁するのは控えるよう促すべきだ。対抗措置が必要なら、WTOの枠組みを使って一緒にやるよう持ちかけてもいいだろう。

 同時に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で合意したルールを世界に広げる。TPPは技術移転の強要を禁じ、紛争時の解決手段も記した。中国の不公正な動きを封じるのに必要なのは国際的な連携だ。

 米国にその努力がなければ、たとえ問題意識が正しくても国際社会の理解は得られまい。中国が対抗措置を講じる報復合戦が生じれば、解決はさらに遠のくだろう。

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