次々つぶされた晴れ舞台 中国が恐れる北崩壊「レッドライン」は米の軍事行動 (3/3ページ)


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 ロシアのプーチン大統領も、中国に強く圧力をかける一人だ。新興5カ国(BRICS)首脳会議の閉幕後、記者団にこう語った。

 「制裁はもう限界に達して効果がない」「北朝鮮は雑草を食べることになったとしても、自国の安全が保障されない限り(核開発の)計画をやめない」

 一見、日米が主導する北朝鮮への制裁強化に否定的な考えを示しただけに映る。しかし外交関係者は、プーチン氏が訪問先の中国でこの発言をしたのは、「日米と同じ行動をとらないよう中国を牽制する狙いがある」と指摘した。

 中国人民大学の北朝鮮専門家、成暁河副教授は海外メディアに「核兵器を持つ北朝鮮より、崩壊した北朝鮮の方が中国にとってリスクが大きい」と語った。

 中国にとって最悪のシナリオは、(1)大量の難民が中国に押し寄せる(2)親米政権が誕生する-事態だ。

 北朝鮮の金正恩政権を崩壊させかねない石油禁輸に反対する背景には、こうした事情がある。同時に習氏は、10月の共産党大会で権力基盤を固めるまで、米中関係の決定的対立も避けなければならない。

 このためプーチン氏の牽制にもかかわらず、米国に譲歩し「石油の輸出制限には応じる可能性がある」(外交筋)とも指摘される。

 金政権の崩壊を望まない習政権にとって、レッドライン(越えてはならない一線)の対象は北朝鮮ではない。「米国が金政権の転覆を目指す軍事行動を起こしたときだ」との見方が専門家の間で広がっている。

 北朝鮮が核実験を行った翌4日付の人民解放軍機関紙、解放軍報に装甲車が渡河する訓練写真が掲載された。朝鮮有事への対応を連想した外交関係者もいる。

 米国が政権転覆の軍事行動を起こすとき、中国軍が鴨緑江を渡河し、北朝鮮領に進軍するという選択を習氏がするのか。トランプ米政権が見極めたいのはこの一点かもしれない。(北京 藤本欣也)