東日本大震災の津波被害に遭った沿岸部では、災害公営住宅や防潮堤、道路など復興に欠かせない大型公共事業が続いている。しかし被災市町村の大半は人口が少なく、財政力も弱い。インフラ整備が進むにつれ、自治体からは「将来、維持していけるのか」との不安が漏れ始めた。
自治体税収乏しく
「復興需要は衰えない。町を一つ造っていますから」。津波で市街地が壊滅した岩手県陸前高田市。山を切り崩して造成した高台で、大手ゼネコン清水建設などでつくる共同企業体(JV)の渉外担当、佐々木信孝さん(66)が語った。
津波被災地は、暮らし再建に不可欠な公共事業が莫大にある一方、自治体の税収は乏しい。このため国は補助金の配分などで手厚く支援する。財政規模は膨らみ、岩手県大槌町の2017年度当初の一般会計は約550億円と、震災前の約10倍。宮城県女川町は約9倍の約520億円だ。
公共事業は本来、国と自治体がお金を出し合って実施するが、11~15年度は特例的に被災自治体の負担をゼロにした。16年度からは自治体も一部負担する仕組みに改められたものの、被災地への配慮で影響は最小限に。予算規模1兆円超の宮城県の負担額は、17年度で20億円程度だ。
同県は震災前から、内陸部で24キロの道路を整備していた。陳情を繰り返してもなかなか国の補助金は出なかったが、震災後に状況は一変。復興に必要な事業だとして、国が費用を全額負担したことで20年度までに大部分が開通する見通しとなった。