環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案が10日の衆院本会議を通過したが、脱退を掲げた共和党のドナルド・トランプ氏が米大統領になることで協定の早期発効は絶望的になった。日本政府は、他の参加国との連携を密にしながら、トランプ氏に自由貿易体制の重要性を訴え、米国が極端な保護主義に走らないよう求め、TPPの発効につなげたいところだ。
米議会で過半数を占める共和党の重鎮、マコネル上院院内総務は、9日の記者会見で「TPPが年内に議会に提出されることは確実にない」と明言した。オバマ政権は年内の議会承認を目指す構えだが、困難な状況になり、TPPが長期にわたって漂流するのは避けられない。
トランプ氏は選挙期間中、自由貿易を否定するような言動を行ってきた。
来年の大統領就任日にTPP脱退を宣言すると表明し、日本など他の参加国との再交渉も行わないと主張していた。
また、TPPを含む自由貿易が米国内の製造業衰退や賃金伸び悩みの原因だとしてやり玉に挙げ、対米輸出が多い日本や中国、メキシコの商品について関税を引き上げると主張。特に対日貿易で赤字額が大きい乗用車は標的になり、現在の2.5%から日本の米国産牛肉の関税と同じ38.5%まで上げるとぶち上げた。