【米大統領選】トランプ、クリントン両候補は「世紀の討論」で何を訴えたか (1/3ページ)


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 「世紀の討論」と称された米大統領選の民主党候補、クリントン氏と共和党候補、トランプ氏による初のテレビ討論会。国際規模の外交・安全保障問題や経済のほか、女性の大統領としての「資質」の問題にも議論が及んだ。

■【安保】強調か孤立か鮮明

 候補者討論会では、オバマ米大統領が2期8年間の任期で進めてきた国際協調主義の継続が議題となった。民主党のクリントン候補が同盟国や友好国との協力関係を重視してアジアや中東の安定を図る決意を語ったのに対し、共和党のトランプ候補はオバマ氏を批判。「米国第一」のスローガンの下、米国の守りを固める孤立主義的な姿勢を鮮明にした。

 クリントン氏は、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討への決意を語り、トランプ氏を「イスラム国家と協力しなければならないときにイスラム教徒を侮辱している」と批判した。イスラム教徒を入国禁止にするとの同氏の発言が念頭にある。

 オバマ政権で国務長官を務めたクリントン氏は、アジア重視のリバランス(再均衡)戦略やイラン核協議に深く関わった。「軍事より外交」を掲げたオバマ氏に比べ、IS掃討作戦の強化を主張するなど軍事力の役割を重視する傾向が強いが、基調は単独行動を控える国際協調主義だ。

 こうした「オバマ-クリントン」路線をトランプ氏は強く批判。「クリントン氏が経験があるといっても悪い経験だ。悪い経験を今後4年間、続ける余裕はない」として、オバマ路線の継承を強くけん制した。

 トランプ氏は、ISの台頭は米軍のイラクからの完全撤退による力の空白が招いたと主張。サイバー攻撃に関し、「私たちにはロシアからか、中国からか分からない。オバマ氏の下、かつてあった支配力を失ったからだ」と述べた。

 また、「トランプ政権」が誕生した際の同盟関係に対する日本の懸念を挙げ、「同盟国を助けたいが、私たちは巨額の金を失っている。世界の警察官であることはできない」と語った。(ヘンプステッド 加納宏幸)