【ワシントン=小雲規生】国際通貨基金(IMF)は17日、英国が欧州連合(EU)を離脱すると、2019年の実質国内総生産(GDP)が残留した場合より5・6%押し下げられるおそれがあるとの試算を発表した。EU加盟国への輸出の落ち込みや、英国への投資の減少が見込まれるためで、「EU離脱の影響は厳しいものになる可能性がある」としている。
英国はEU離脱を決めた場合、EUとの間で新たな貿易・投資関係を定める協定について交渉する必要が出てくる。しかしIMFは交渉には数年以上かかり、最終的に交渉がまとまらないこともありえるとみている。
IMFによると、英国が当面の間はEUと新たな経済協定を結べないと想定した場合、16年の実質GDPは残留シナリオに比べて0・8%押し下げられる。その後、押し下げ幅は拡大し、19年には5・6%に達する。
この場合の成長率は16年は1・1%、17年にはマイナス0・8%に転落する。その後はプラス成長を回復するが、19年までは残留シナリオで想定される2%強の成長率を超えられない状況が続く。
一方、英国が離脱後の交渉でEU市場へのアクセスを一定程度確保した場合は、19年の実質GDPの残留シナリオからの押し下げ幅は1・4%となる。
IMFは23日の国民投票で離脱が決まった場合、投資家などが英国経済の先行き不透明さを嫌うため、結果判明直後から市場に悪影響が出る可能性を指摘。英国内で個人が借り入れを行う際の金利上昇や不動産価格の下落などが起こりえると分析した。さらに世界中の金融市場に余波が及ぶリスクにも警鐘を鳴らしている。