急速に進む円高に、政府が警戒を強めている。麻生太郎財務相は17日、状況次第で為替介入も辞さない姿勢を示唆し、円相場は小幅に円安方向に振れた。ただ口先介入ということで効果は限定的だった。米国が介入そのものに否定的な上、英国の欧州連合(EU)離脱問題で円高圧力が予想以上に強まる中、日本は動くに動けなくなりつつある。
円相場は16日、1年10カ月ぶりに1ドル=103円台に突入した。麻生氏は17日の記者会見で、「一方に偏った急激な投機的な動きがみられ、極めて憂慮している。これまで以上に必要なときにはしっかりと対応する」と述べた。
この発言を受け、104円台前半で推移していた相場は104円台後半まで円安が進んだ。しかし効果は一時的で、その後はほぼ元通りの水準に戻した。
過度な円高は輸出企業の業績を押し下げ、景気を冷やしかねない。政府は年初から、急な円高のたびに口先介入を行い、円高の進行を食い止めようとした。
ただ、円売り・ドル買い介入は米国の理解がないと実効性が薄い。日米の足並みがそろわないとみられれば、かえって投機的な円買いが進む恐れがある。日本は足元の市場で偏った動きがあると主張するが、米国は「秩序的」とし、双方の認識はずれたままだ。