FRBの追加利上げが遠のいたことが、日銀の金融政策にも影を落とした。市場では日銀が今回、追加金融緩和のカードを温存した理由について「FRBが利上げを思うように進められず、日銀もそのあおりを受けた」との見方が出ている。
日銀は今年1月、マイナス金利政策の導入を決めたが、世界的な市場の動揺にも巻き込まれ、円高株安が進んだ経緯がある。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「日銀は追加緩和に際し、『2度目の“逆噴射”だけは避けたい』と考えた。FRBが利上げを決行し、ドル高の風が吹くときを見計らっているはずだ」と読む。
15日のFOMCでは、年内の利上げ1回を予想するメンバーが6人に急増し、市場に驚きを与えた。FRBのイエレン議長は「雇用創出の継続と、想定通りの成長」を利上げの条件として挙げたが、藤代氏は「FRBは年内に利上げできない場合もある」と指摘する。
日銀の黒田東彦総裁は16日の会見で、FRBに対し「今後とも米国の経済・物価動向、世界経済・金融情勢を見極めながら、適切に金融政策を運営していかれるだろう」と要望した。ただ大統領選を控え、米国が再び円安ドル高への警戒を強める可能性もある。日銀の金融政策は、難しい局面を迎えている。