「三峡ダムを行き来する船の数が当初設計をはるかに上回るスピードで増えており、現地では深刻な渋滞が発生している」
15日に閉幕した中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、各代表から多くの提案・意見が出され、分科会に分かれて活発な議論が展開されたが、その中で注目されたのは重慶の代表からの報告だった。
三峡ダムには船舶の航行用に全長約1600メートルの5段階式の閘門(こうもん)が設けられている。筆者も数年前に通ったことがあるが、1段を通過するのに1時間近く、完全に抜け出るには4時間ほどかかった。それでも1万トン級の大型船が航行可能なので、長江の水運拡大に大きな期待がかけられていた。
1980年代に作成された当初設計では、最大航行量が上りと下りを合わせて年間に1億トンとなっていた。これだけの規模ならば、2030年までは大丈夫だろうという見通しだった。ところが経済の急速な発展で、三峡ダムを行き来する船は予想をはるかに上回るスピードで増え続けた。現状ではすでに最大航行量を上回り、1億2000万トン近くにまで達している。想定よりも15年以上も早く上限を突破してしまったことになる。