人民元は12月5日までの2年間で円に対して50%以上も上昇した。人民元高は中国の輸出競争力を損なわせる。製造業の新規輸出受注指数はこの11月で前年比2・1%減だ。日本企業は対中投資を削減し、他の生産をアジアへ移す動きも出ている。このまま、円安・人民元高が続けば、賃上げ率が年2ケタの中国に見切りをつけて、日本にUターンする企業が続出しておかしくない情勢だ。
円安の動因はもちろん、アベノミクス第1の矢「異次元金融緩和」だ。日銀が資金を大量発行すると、ドルに対する円相場は下落する。中国は逆に人民元をドルに対して切り上げざるをえない。
中国当局は外国為替市場に介入して、人民元を小刻みながら切り上げることで、外部からの資本流入を促している。中国本土にカネを持ち込む勢力の多くは中国の党官僚、国有企業など特権層で、大半は利殖目的であって愛国的ではない。人民元を切り下げると、こうした投機資金の多くが中国から逃避する。すると、不動産や株式相場は暴落する恐れがある。従って、習近平政権は汚職高官の不正蓄財資産の対外持ち出しを取り締まると同時に、人民元相場を引き上げざるをえない。中国は自身の制度と内部事情のためにアベノミクス相場に対応できないのだ。