ただドル建ての日経平均株価は、日銀の追加緩和後もほとんど変化していない。円建ての日経平均は上昇しているが、円安でドル建て日経平均の伸びが抑えられているからだ。ドル建てで日本株の運用収益を計算する海外投資家はまだ慎重姿勢とみられる。
円安で輸出企業の円建て収益は大きく膨らんでいるが、現地通貨建ての海外売上高はそれほど伸びていない。三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは「現在の株価は日本企業の“実力”を上回っている」と分析する。
財政再建が争点
財務省は1日、12月分の個人向け2年物国債を募集しないと発表した。金利低下で応募者の利回りがマイナスとなるため、買い手がつかないと判断した。募集中止は11月分に続いて2回連続。日銀の大規模緩和の影響で市場金利が記録的な低水準となっており、国債発行でも異例の事態が続く。
金融緩和は「円安・株高・債券高(金利は低下)」をもたらしたが、景気が本格回復しなければ海外マネーが流出し、「円安・株安・債券安」のトリプル安も現実味を帯びる。
こうした中、米ムーディーズは日本の長期国債格付けを「A1(シングルAプラス)」へ1段階引き下げた。
「アベノミクスは金融緩和に頼りすぎてしまっている。政府の財政再建と『第3の矢』の成長戦略が重要」。大和総研の熊谷亮丸・チーフエコノミストはこう指摘した。選挙戦では、日本経済の“実力”をどう高めるかが争点の一つになる。