中国と韓国の自由貿易協定(FTA)の実質的な妥結は、「関税撤廃される品目に自動車が含まれない。その他も時間をかけて撤廃されるため、当面は日本経済に大きな影響はない」(経済産業省幹部)と冷静な受け止めが多い。産業界では、日中韓の3カ国FTAや環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉などを速やかに進めるよう求める声が強まっている。
中国市場で、韓国・現代自動車はシェア4位と躍進を続ける。ただ、日本勢トップの5位日産自動車の関係者は中韓FTAについて「(インパクトは低い。それほど警戒していない」と慌てる様子はない。電機やIT分野の巨大メーカーに成長した韓国・サムスン電子と競合する大手電機メーカーの関係者も「基本的に現地生産が中心で、関税がかからないため、それほど影響はない」としている。
もっとも、これまでのウォン安を背景に力を付けた韓国勢が自由貿易で有利な条件を引き出したことで、日本企業には通商戦略の出遅への懸念も強まっている。別の自動車大手幹部は「(日本の自由貿易交渉が進まないと)恩恵が受けられず、競争力にマイナスだ」といらだちを見せる。