東京証券取引所の2部や新興市場マザーズなどから、1部に上場市場を変更する企業が増えている。東証1部に上場すれば対外的な信用が増すほか、機関投資家の投資対象になり、より多くの投資を呼び込める。今年に入って2部とマザーズから1部への昇格企業は51社(予定含む)と、すでに昨年1年間の実績を上回る。平成17年以来、9年ぶりの高水準となる公算が大きい。
「マザーズで多額の資金を調達させていただいたおかげで成長できた」
5日に上場市場を1部に変更したサイバーエージェントの藤田晋社長はこう振り返った。同社はマザーズ創設翌年の12年に上場し、売上高は上場当時の4億5千万円から1624億円(25年9月期)に伸び、同市場で最も投資家に売買される銘柄の一つだった。
今年、1部には2部から42社、マザーズから9社が移行。昨年は1年間で計50社が移ったほか、ジャスダック上場だった楽天が1部に昇格した。
市場変更は新規株式公開(IPO)と同じく、景況感や企業業績が良好だと増える。
また、東証が23年につくり、今年から該当企業が出てきた「10年ルール」も影響している。これは、マザーズ上場から10年たった企業に、継続上場か2部への市場変更かを選択してもらう制度で、同時に上場廃止基準も2部並みに厳しくなる。東証はマザーズを、企業が1、2部に上場するまでの過渡的な役割の市場と位置づけている。
1部に上場すれば、機関投資家の投資対象になるほか、東証株価指数(TOPIX)に連動する投資信託に組み込まれるなど、売買が活発になりやすい。
東証上場推進部の早瀬巧アカウントマネジャーは「上の市場に行くほど、上場のメリットをより多く享受してもらえる。『市場変更セミナー』の開催などで後押ししていく」としており、1部に移る動きは今後も続きそうだ。