経済指標でも改善傾向が出始めた。総務省の家計調査は、2人以上の1世帯当たりの月間消費支出が約3万円増加した。大手旅行代理店の添乗員が「シニア層の海外旅行者が増え、ビジネスクラスを利用する比率はここ数カ月で急激に上昇」と語るなど、高額商品やサービスが好調だ。有効求人倍率もリーマン・ショック以前の08年7月以来の水準まで回復した。
一方、民間設備投資は回復途上だ。新規設備投資には慎重な様子もうかがえ、景気の本格的な回復を実感できない要因にもなっている。国内の生産動向を示す鉱工業生産指数の改善は明確になっている中で、民間投資拡大が、景気回復には欠かせない。
安倍政権半年をニッセイ基礎研究所の櫨(はじ)浩一専務理事は「政権に対する高い期待に実体経済が追いついていない」と分析する。成長戦略では「今は企業の投資など供給面に焦点があたっているが、同時に、企業がため込んだ内部留保を、株式配当や賃上げなど家計に移し、購買力につなげるような内需喚起の政策も必要」と期待する。