だが、やがて鉱山とモリコープを取り巻く事情が激変する。レアアースを戦略資源に位置づけた中国が、1990年代から安価な労働力を武器に輸出攻勢をかけたのだ。マウンテンパス鉱山はこれにひとたまりもなく、競争力を失って、2002年にいったん閉山の憂き目に遭った。今では中国が世界生産の9割超を占めている。
米国産レアアースの灯も消えたかに見えたが、携帯電話などのハイテク製品をはじめレアアースの用途が格段に広がったことで、市況が回復。息を吹き返したモリコープはレアアース市場に再参入を果たし、鉱山は09年に再開された。
同社は新施設による増産も決め、年間約2万トンの生産能力を来年半ばには倍増させる計画だ。マーク・スミス最高経営責任者(CEO)は「現在当社の世界シェアは5%前後だが、増産後は約3割まで引き上げられるだろう」と意気込む。
足元のレアアース価格は、中国が輸出制限を実施して高騰した昨年と比べればやや弱含んでいるが、それでもかつての低迷期からは立ち直り、スミスCEOは「マウンテンパスは世界でも最も豊かな鉱床の一つ。今後も長期間にわたり生産が見込める」と自信を深めている。