もしこのような推理が真実に近いものであれば、そこからは、今後の中国情勢を占う上で実に重要な意味を持つ結論を導くことができる。
その1つはすなわち、胡錦濤指導部と解放軍の間で、対米戦略において深刻な亀裂が生じてきていることであり、もう1つは、今の解放軍がすでに党と政府の統制から逸脱して、独自の意思を持って行動しようとしていることである。
それは確実に、中国における体制の崩壊を予兆させるような重大な政治的変化である。そして日本の安全保障の視点からすれば、統制の利かない中国・人民解放軍のこれからの暴走はまた、大変憂慮すべき深刻な事態になるであろう。
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【プロフィル】石平 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。