サハリン、観光誘致を強化 日本統治時代の建造物や自然PR

 
瓦屋根のサハリン州立郷土史博物館=6月11日、ロシア極東ユジノサハリンスク(共同

 ロシア極東サハリン州が日本からの観光客誘致に力を入れている。日本統治時代の建造物や雄大な自然をPR。石油や天然ガス開発によりロシアの中でも比較的所得が高く、治安も良いとされており、観光を新たな経済の柱にする狙いだ。

 旧樺太のサハリンは、日露戦争後の1905年から45年まで南部を日本が統治。州都ユジノサハリンスク(旧豊原)には、州立美術館(旧北海道拓殖銀行豊原支店)など当時の建造物が残っている。日本風の瓦屋根を持つ州立郷土史博物館(旧樺太庁博物館)を訪れた北海道稚内市の公務員、岩崎あすかさん(30)は「壁に菊の紋章があった。日本時代の名残があって面白い」と話した。

 ロシア観光庁の資料によると、2014年のサハリン州への外国人観光客は約2万7000人で、前年の3倍以上に急増。その後も増加傾向とみられ、16年は約6500人の日本人が訪れたという。同州の観光業関係者は「地理的に近い日本は重要な市場」と話す。

 ユジノサハリンスク近郊のチェーホフ山など手つかずの自然も魅力だ。ガイドのロシア人男性(58)は「日本ほど人も多くない。自由に楽しめる良さがある」と語る。

 リゾートも開発の余地が大きい。ユジノサハリンスクにあるスキー場「山の空気」は、北海道留寿都(るすつ)村のルスツリゾートと業務提携。ナタリヤ・イワノワ州観光局長は「コースや飲食店を整備し、極東一のリゾートを目指す」とアピールした。

 日本とサハリン間には空路のほか、南部コルサコフと稚内市を約4時間半で結ぶ夏季限定の客船航路がある。ただコルサコフ港の近くには駅やバス停がない。客船を運航する北海道サハリン航路(稚内市)の日向寺和裕専務は「受け入れ体制が課題だ。車や通訳代がかさみ、個人旅行向けではない」と指摘する。

 外国人の査証(ビザ)取得手続きの簡素化も計画されているが、具体化は先になりそうだ。ユジノサハリンスクの旅行会社のタチヤナ・ボロベワ社長(55)は「ビザ手続きの煩雑さは、日本人客が旅行を断念する一因。早期の実現を」と期待している。(ユジノサハリンスク 共同)