大学のベンチャー株保有解禁 政府、未来投資会議で方針

 
未来投資会議で挨拶する安倍晋三首相(右から2人目)=24日、首相官邸

 政府は24日開いた未来投資会議で、2017年度から大学が大学発ベンチャー企業の株式を一定期間保有できるようにする制度改革方針を示した。ベンチャーのイノベーション(技術革新)に大学の知見を生かし、収益を大学に還元する仕組みを作る。また地域経済振興の拠点となるスポーツ施設を25年までに全国20カ所で整備する方針なども提示。日本経済の成長軌道を確実にするため、あらゆる政策を総動員する。

 現行制度では大学は、保有する大学発ベンチャーの株式を公開直後に売却しなければならない。政府はこれを改め、大学が新株予約権を行使して取得したベンチャー株を保有できるようにする。

 大学は、還元されたベンチャーの収益を原資に、施設の強化や研究拡大を進めることができる。大学の経営感覚を高めることも期待でき、18年度からは、理化学研究所といった研究開発法人もベンチャーに出資できるようにする。

 政府が大学を重視するのは、人材や基礎科学技術、研究施設など、イノベーションを生む基盤がそろっているためだ。第4次産業革命の進展で国際競争の激化が予想されるなか、大学の「能力」を産業競争強化に最大限生かしたい考えだ。

 一方、政府は、スタジアム、アリーナなどスポーツ施設の収益性を高めて人を呼び込む拠点とし、地域経済の核とする取り組みを進める具体策を打ち出した。

 音楽イベントなども行えるよう施設を多機能化することや、ITを駆使したサービスで来場者の満足度を高めることを想定。まずは17年度までに全国10カ所の候補地を公募で選び、専門家を派遣して事業計画を具体化する。国として、資金支援や税制優遇も行う。

 会議では先行事例として、昨年開幕したプロバスケットボール「Bリーグ」が進めるアリーナ整備や、愛知県豊橋市が取り組む「総合エンターテインメント型」アリーナ構想が紹介された。

 また、会議では、情報プラットホーム構築などを通じた農業のICT(情報通信技術)化を加速させる方針も確認された。

 日本経済は、少子高齢化で潜在成長率が0.8%程度と低迷している。安倍政権は生産性の向上に向け成長戦略や「働き方改革」に取り組んでいるが、成長をより確実にするためには、多岐に渡るきめ細かな対策が不可欠となる。

 ■未来投資会議を踏まえた政府方針のポイント

 ≪スポーツ≫

 ・地域振興の拠点機能を持たせたスタジアムなどのスポーツ施設を2025年までに全国で20カ所整備

 ・新法を活用し、スポーツ施設のある都市公園は、民間による収益施設の併設・運営を長期化

 ≪農業ICT≫

 ・農業従事者、公的機関、研究機関などが持つ農業データを集約した情報プラットホームを17年中に構築

 ・25年までに、農業の担い手のほぼ全てが、データを駆使した農業を実践

 ≪大学≫

 ・17年度から、大学発ベンチャーに出資した大学は、株式公開後の一定期間、株式保有を可能に

 ・18年度から、研究開発法人もベンチャーに出資できるようにする