「トランプ相場」日銀の2%物価目標に追い風なるか

トランプ米次期大統領

 「トランプ相場」による円安・株高が、日銀の掲げる「2%」物価目標の“追い風”になるとの見方が強まっている。足元の消費者物価指数の伸び率はマイナス圏に沈んだままだが、円安で輸入物価を押し上げる効果が期待できるためだ。このまま円安が長期化すれば、黒田東彦日銀総裁の任期中(平成30年4月まで)の達成も視野に入ってくる。

 円安・株高の背景にあるのは米長期金利の上昇だ。トランプ次期大統領の経済政策への期待に加え、12月には利上げに踏み切るとの観測から、米長期金利は大統領選前の1・8%台から大統領選後に2・3%台へ急上昇した。

 日本の長期金利も米長期金利につられて上昇しているが、日銀が指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を17日に実施した効果もあり、上昇は緩やかで、日米の金利差は広がっている。

 野村証券は、仮に「為替レートが1ドル=113円の水準が続き、原油価格が1バレル当たり10ドル上昇すれば、消費者物価指数は29年度後半に1%台半ばまで上昇する」と試算。日銀が目標とする「30年度ごろ」の2%達成も現実味を帯びる。

 ただ懐疑的な見方も多い。

 円安で輸入品の価格が上昇すれば、消費者の節約志向が高まる懸念がある。来年の春闘に向け賃上げに慎重な企業も多く、「30年度中の2%達成は厳しい」(経済アナリスト)との声も根強い。

  (飯田耕司)