自動運転、法改正も検討 事故の賠償責任を整理 国交省有識者研究会
自動運転車が事故を起こした場合、損害賠償責任の所在がどうなるのかについて議論する有識者研究会の初会合が2日、国土交通省で開かれた。ドライバーがハンドルを握らない完全自動運転車では、賠償責任がメーカー側にも生じる可能性がある。国交省は早期に課題や解決策を整理することで、実用化に向けた技術開発を後押しする。
藤井直樹自動車局長は初会合の冒頭で、「自動運転は社会問題を解決する有用な手段だが、実用化に向けて必要となる検討事項の一つが民事責任のあり方」とあいさつ。担当者が最近の自動運転技術の動向などについて説明した。
国交省は今後、すでに自動運転に関する交通法規を議論している警察庁とも連携して今年度中に論点を整理。来年度以降、自動車損害賠償保障法(自賠法)改正も含めた検討を進める。
交通死亡事故の9割以上はドライバーの法令違反が原因で、自賠法で人身事故は原則、車の所有者やドライバーが賠償責任を負うと規定している。だが完全自動運転車ではドライバーが運転に関与せず、車に搭載された人工知能(AI)が通信機能との連携で周囲の状況を判断してハンドルやブレーキなどを操作するため、これまでの法規制が当てはまらないケースが想定される。
例えば、事故原因がAIを含めた制御システムの欠陥の場合、システムを開発した企業にも責任が及ぶ可能性があるほか、サイバー攻撃で通信機能が不能になるケースも考えられる。責任の所在が不透明なままでは、実用化に向けたメーカーが技術開発に二の足を踏みかねないほか、実際に事故が発生した際、被害者救済が遅れることになる。
政府は2020年をめどに限られた場所での自動運転技術を実用化するほか、25年をめどに完全自動運転車の実現を目指している。
だが、米国ではすでに自動運転機能を備えた車による死亡事故が起き、9月に開かれた先進7カ国(G7)交通相会合の共同宣言では、同事故も念頭に「法的な対応」が今後の検討課題として盛り込まれていた。
関連記事