築地移転延期 「一体どういうことなの!」小池都知事、ドイツの空港でブチ切れ

 
定例会見で、豊洲市場の盛り土問題の内部調査結果などを報告する、小池百合子東京都知事=30日、東京都新宿区の東京都庁(寺河内美奈撮影)

 築地市場(東京都中央区)の移転先となる豊洲市場(江東区)の主要施設下に土壌汚染対策の盛り土がなかった問題は、東京都の内部調査で責任者を解き明かせぬまま、舞台は都議会での審議に移る。都議会の一部会派から豊洲整備に携わった石原慎太郎元知事のほか、都庁の元幹部の参考人招致を求める動きが出ているが、会派間の温度差もあり、真相解明の機会として実現するか注目される。

 小池知事が激怒

 「一体どういうことなのか」

 リオデジャネイロ・パラリンピックの閉会式(日本時間9月19日)に出席後、帰国のためドイツ・フランクフルトの空港に待機していた小池百合子知事に、豊洲市場に絡む1本の報告が入った直後、小池知事はこう語気を強めた。

 豊洲市場の環境影響評価(アセスメント)の実施後、都の中央卸売市場がアセスメントを担当する環境局側に、盛り土がないことを伝えていなかったとする報告。市場側は盛り土以外の計画変更については細かく環境局側に伝えていただけに、その事実について小池知事が激怒したというのが真相だ。

 「盛り土の有無で環境アセスの方法も変わるはずで、知事は市場が盛り土がない事実を隠すため、故意に報告しなかったとの疑いを強めたのではないか」。幹部の一人はこう話した。

 9月30日に公表された都の内部調査の報告書では、担当の中央卸売市場がアセスメントの評価書の記載を正しく変更しなかった点について「重大な変更事項を報告しなかった事実は重い」と認める一方、内部調査の限界を象徴する一文を盛り込んだ。「単なる失念だったのか、何らかの考えがあったのかなどを今回は十分に解明できなかった」

 会派の思惑交錯

 調査報告書の公表で一定の区切りがついた「盛り土」問題だが、責任者の特定に至らなかったことで、都議会側の反発が大きいのも事実だ。

 最大会派である自民党の中堅議員は「到底、納得できるものではない。議会での質疑を通じ徹底的に追及する」と意気込む。都議会では4日の代表質問、5日の一般質問を経て、6日には経済・港湾委員会で本格審議が行われる。

 この委員会審議では、豊洲市場整備に絡んだ関係者が、実態解明に向けて参考人として招致されるかどうかが最大の焦点になるとみられている。

 共産党は、豊洲整備に携わった石原氏や浜渦武生元副知事、佐藤広元副知事や、歴代の市場長らの名前を記載した「参考人招致要求名簿」を9月27日の委員会理事会に提出。自民が「委員会で都の説明を聞いてから判断すべきだ」などと主張したため、現時点では意見がまとまっていない。

 一方、民進党内には温度差がある。若手都議は「参考人招致は非常に重いことで、軽々しく行うものではない。資料を精査し、十分審議した上で招致が適当か決めないといけない」と話すが、中堅都議は「安全対策が万全か確認したいので、参考人招致に反対する理由がない」と前向きだ。

 公明党は自民と同様のスタンス。都議の一人は「支持者から『豊洲の問題をきっちり追及してほしい』という声が強い」とし、「党派に関係なく、原因を解明したい思いは一緒だ。当事者たちから直接、話を聞く選択肢は否定できないだろう」と話した。

参考人招致

 調査のために常任委員会などに当事者らを招致し、質疑を行う。東京都では常任委員会への招致は条例に基づき行われるが強制力はなく、虚偽答弁を禁じる規定もない。招致を行うかどうかは委員会理事会で協議され、意見が割れた際には採決や委員長への一任などによって決定する。