オバマ政権、3つの“同時多発テロ”に衝撃 沈黙ににじむ苦悩
【ワシントン=青木伸行】国連総会の開催中に、くしくもニューヨーク、ニュージャージー、ミネソタの各州で、ほぼ同時に3つのテロが発生し、オバマ政権は強い衝撃を受けている。相互の関連性や犯人像と背景、犯行の動機などは、今後の捜査結果を待たなければならないが、「移民大国」の米国におけるテロの潜在性の高さと、テロが常態化している現状を改めて浮き彫りにしている。
オバマ大統領は18日、国連総会に出席のため、ニューヨーク・マンハッタンに入った。だが、民主党の大統領候補、ヒラリー・クリントン前国務長官を応援する集会では、一連のテロに触れずじまいだった。
捜査当局と政府は、ニューヨークでの「爆発事件」をテロと断定していない。オバマ氏も捜査の結果を慎重に見極めようと、“沈黙”を保っているとみられる。だが、昨年12月、カリフォルニア州での銃乱射テロの直後に、テロを非難し銃規制を訴えたのとは対照的だ。沈黙はむしろ、衝撃と困惑の大きさを物語る。
テロについては、考え方の相違から国際法上の定義はないが、国連は「住民を威嚇、あるいは政府や国際組織の行動を強制し自制させる目的で、危害を引き起こすあらゆる行動」と位置づけている。これに基づけば、今回の3つの事件はテロ以外の何ものでもない。
爆発物も、ニューヨークでは携帯電話で起爆したとみられ、中東や東南アジアでは恒常的に使われている起爆方法だ。ニュージャージー州ではパイプ爆弾が使用された。カリフォルニア州での銃乱射テロでも、容疑者の自宅から多数のパイプ爆弾が発見されている。
「爆弾に限れば、米国内のテロリストの間ではパイプ爆弾が『主流』だ」(テロ専門家)。ニューヨークで発見された圧力鍋爆弾が、2013年のボストンでの連続爆破テロで使用されたことは記憶に新しい。それでも「圧力鍋爆弾は少ない」(同)という。
これら爆弾の製造方法は、インターネットで簡単に入手できる。欧州でのテロに比べ、米国の「ホームグロウン」(自国育ち)や「ローンウルフ」(一匹おおかみ)によるテロでは、殺傷能力が高い銃器が使用されることが多い。今回のニューヨークでのテロは、爆弾の恐怖を改めて市民に植え付けている。
ミネソタ州では刃物がテロの凶器となり、オバマ政権はテロの手段の多様性にも、苦悩しているようだ。
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