首相、10兆円規模の経済対策を指示 リニア大阪延伸を最大8年前倒し

 

 安倍晋三首相は12日、デフレ脱却を加速するため、総合的な経済対策を取りまとめるよう石原伸晃経済再生担当相に指示した。事業規模は10兆円を超える見通し。英国の欧州連合(EU)離脱問題などで景気の停滞懸念が強まっており、1億総活躍社会の関連施策やインフラ整備を通じて、内需を下支えする。対策は月内をめどに策定し、裏付けとなる2016年度第2次補正予算案を秋の臨時国会に提出する。

 経済対策は「1億総活躍」「インフラ整備」「中小企業の資金繰り支援」「防災対策」の4つを重点項目とする。

 1億関連では、若者を対象とした無利子の給付型奨学金などを検討。インフラ関連では、訪日外国人客の拡大に向けた港湾施設の拡充や、農産物輸出のための施設整備を盛り込む。政府が低利で貸し出す財政投融資を活用し、リニア中央新幹線の大阪延伸計画を最大8年前倒しする。

 首相は「20年度の財政健全化目標は堅持する」としており、財源の不足分は余剰資金や財政投融資の活用、公共工事に充てる建設国債の発行などで賄う方向だ。指示にあたり、首相は「デフレからの脱出速度を最大限に上げ、しっかりとした成長の道筋をつける」と強調した。

 ただ、少子化による労働力不足などを背景に、日本経済の潜在成長率は0.5%未満まで落ち込んでいる。市場では、デフレ脱却を確実にするには、こうした対策に加え「生産性を高めるための抜本的な構造改革が必要だ」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員)との声が上がる。

 非正規労働者の待遇改善、解雇規制の緩和といった労働市場改革や、農産物の価格競争力を高めるための生産コスト削減など、既得権益層から反発が強い改革をどこまで進められるかが問われそうだ。