シティー地盤沈下か 金融機関など移転やリストラ拡大も
英EU離脱【ロンドン=岡部伸】英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決め、ロンドンの金融街シティーに拠点を置く金融機関や企業が欧州大陸への移転やリストラを検討する動きが広がってきた。世界屈指の金融センターの地盤沈下と経済への影響が懸念されている。
一部英メディアは1日、英格安航空(LCC)のイージージェットが本社移転を検討中と報じた。英携帯電話大手ボーダフォンも欧州大陸に本社を移す可能性を示唆する。英金融大手HSBCは、ロンドンの本社従業員のうち最大千人をパリへ移すことを検討。米銀大手JPモルガン・チェースも欧州事業を見直す。
シティーは金融街としての伝統と緩やかな金融規制を武器に、世界からマネーと人材を集めてきた。EU域内の金融業のシェアは英国が約25%で、2位ドイツの約15%と大差がある。
だが、離脱で国境を越えた経済活動がどのような形になるかは予断を許さず、企業は浮き足立っている。1加盟国の免許でEU域内の営業が可能になるEUパスポート制度も問題だ。英国で認可を受けた金融機関が制度を利用できなくなる恐れがあり、英国外に欧州統括の法人を移す検討を始めた金融機関もある。
一方、EU離脱がシティーに有利に働く部分もあるとの指摘もある。欧州債務危機を受けEUは金融規制を強化しているが、離脱後はEUの動きに縛られずにすむという見立てだ。
ただ、EU側も警戒を強めている。英国は非ユーロ圏だが、ロンドン市場のユーロ取引量は世界最大。欧州中央銀行(ECB)幹部は仏メディアに対し、欧州経済地域(EEA)には残って資本の移動を原則自由に保つ「ノルウェー型」の離脱方法を採らない限り「ロンドンに決済機関は置けない」と牽(けん)制(せい)した。
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