実態は悪化の可能性高く 円高圧力が重し 6月日銀短観

 

 6月の日銀短観は大企業製造業の景況感が3月から横ばいとなったが、企業が感じている景気の実態は悪化している可能性が大きい。英国のEU離脱決定後に円高圧力が強まり、企業の業績悪化懸念がさらに大きくなっているからだ。

 大企業の業況判断指数(DI)を業種別にみると全28業種中14業種が悪化した。円高で採算が悪化している生産用や業務用の機械などの不振が目立った。

 ただ、ニッセイ基礎研究所の櫨浩一氏は「今回の業況判断指数は英国のEU離脱決定前の数字。実態はもっと悪い」と指摘。大企業製造業が想定する平成28年度の為替レートが1ドル=111円41銭なのに対し、足元の円相場は102円台半ばで推移している。当面、円高基調が続く可能性が高く、景況感は今後さらに悪化しそうだ。先行きの改善を見込む自動車も悪化に転じる可能性がある。

 経済の好循環に不可欠な設備投資は、28年度に大企業全産業(ソフトウエアを除く)で前年度比6・2%増を予定する。萩生田光一官房副長官は1日の記者会見で、短観に関し「設備投資が増加するとの見通しは日本経済の足腰がしっかりしていることを表している」と述べた。

 だが、円高で為替差損が膨らんで業績が悪化すれば、投資計画の見直しを迫られる可能性もある。

 また、今回の短観では、大企業製造業、非製造業とも販売価格DIの下落傾向が弱まる一方、仕入れ価格DIは大幅に上昇した。SMBC日興証券の牧野潤一氏は「企業が仕入れ価格の上昇分を販売価格に転嫁できていない状況を示しており、デフレ脱却はさらに遠のきかねない」と危惧する。

 市場では、7月末の金融政策決定会合で事実上の円高修正を図る追加の金融緩和に踏み切るとの見方がくすぶっている。一方で、1月に導入を決めたマイナス金利政策も円高の流れを止められなかったことから、金融政策の限界も意識されている。(飯田耕司)