「魂なき外交官」 大統領選出馬示唆に野党&左派メディアから恨み節炸裂
【潘基文氏発言の波紋】
韓国は2017年末の大統領選挙に向け、「政治の季節」に入った。政治に政争は付きもの。とはいえ、保守系の与党・セヌリ党の有力候補として急浮上した国連の潘基文事務総長に対し、左派の野党系メディアなどからの批判が早速始まっている。潘氏が左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に政府の後押しで事務総長になったにもかかわらず、現与党からの出馬を示唆したことが“変節”ととらえられているからだ。
左派系紙ハンギョレ(日本語電子版)は、5月末、「国連の潘事務総長が大統領選出馬示唆、与野党で反応分かれる」と題した記事で、野党「共に民主党」の議員の発言を紹介。
この議員は「国連事務総長として職務に忠実であるべき人が大統領選挙への挑戦の可能性を示唆していることは望ましくない。国語の時間には国語の勉強をすべきなのに数学の本を見ている受験生のようなもの」と批判した。
さらに「国連事務総長は大統領候補になる肩書ではない」と題した社説では「潘氏は彼を国連事務総長に推薦した盧武鉉大統領が死去した当時、弔問にも行かず、2、3か月後の2009年8月に済州平和フォーラム講演者として参加した際にも墓参しなかった。与党の大統領選候補を念頭にした者としては賢い政治判断だったかもしれないが…(以下略)」と恨み節を炸裂(さくれつ)させた。
さらに、潘氏が米ハーバード大に留学していた1980年代に米国に亡命していた金大中元大統領の動向を当局に報告していたことにも言及。「魂なき外交公務員」と一刀両断している。
保守系の中央日報(日本語電子版)も5月31日、「あえて政治的な縁でいえば、潘事務総長は盧武鉉大統領時代に外相を務めた後、国連事務総長に選出されたため、共に民主党に根を持つ」と指摘した。
ニューヨークの国連本部では、どの加盟国の政府からも等距離で中立であることが求められる事務総長の政治的な言動を疑問視する声が広がり、定例のブリーフィングでも度々取り上げられている。
海外の見方も冷ややかだ。英紙テレグラフ(電子版)は、潘氏が「国連史上最悪の事務総長との烙印を(らくいん)押されている」としたうえで、「韓国の大方の人にとっては、国連での彼の業績といったものは重要なことではなく、事務総長に選ばれたという事実だけで彼を成功した人物と考えている」との韓国人元外交官の見解を掲載した。
関連記事