日本じゃ想像できないよ…中国人警官がイタリアを闊歩する姿なんて

 
北京の人民大会堂前で警備する武装警察隊員。まさか日本の街を巡回することはあるまい(共同)

 世界規模で見た場合、今や海外旅行する10人のうちの1人が中国人だという。世界各地の旅先で中国人観光客が使った金額は中東カタールの年間の国内総生産(GDP)を上回る水準との統計もある。今年のメーデー連休(4月30日~5月2日)に中国人が選んだ海外旅行先はソウル・バンコク・東京の順だったが、富裕層には欧米も人気だ。イタリアでは中国人観光客誘致に向け、制服姿の中国人警官と自国警官による街頭巡回がミラノとローマで始まった。中国人観光客を犯罪から守ることが目的という。中国人警官がわが町を闊歩する姿なんて日本ではありえない。

 カタールのGDP上回る海外での消費欲

 CNNマネー(電子版)は今年3月、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の報告として、中国人観光客が2015年に世界各地の旅先で使った金額は約2150億ドル(約24兆3千億円)に達する過去最高額を記録したと報じた。前年比で53%の大幅増で、この金額はカタールの年間のGDPを上回る水準という。

 また、WTTCと中国国家旅遊局によると、海外旅行に昨年出掛けた中国人観光客の総数は過去5年間で約1億2千万人と2倍以上となった。世界規模で見た場合、海外旅行する10人のうちの1人が中国人になる計算だ。

 WTTCのスコーシル最高経営責任者(CEO)はCNNマネーの取材に対して、中国人は世帯所得が約3万5千ドル(約396万円)になると海外旅行を始める傾向がみられると分析している。2003~13年の間にこの所得規模を超えた世帯数は約2100万で、23年までには新たに6100万世帯が加わる見通しという。

 このペースが続けば、海外旅行する10人のうちの1人どころか、5人に1人が中国人という事態も起こりうる。一方で中国の国家統計局は、同国内の出稼ぎ労働者総数の約1%に当たる270万人以上が昨年、期日通りに報酬を受け取っていなかったとの実態を報告した。CNN(電子版)によれば過去5年で最悪の水準で、格差は広がるばかりだ。

 まずは近場で様子見、そして冒険に出る

 CNNは、中国人の初めて海外旅行の目的地はアジア地域が多いと指摘する。最初はアジアの近場で気軽に行ける場所を選んでいるのだろう。韓国紙、中央日報(電子版)によると、今年のメーデー連休に中国人観光客が最も多く選んだ海外旅行先はソウル・バンコク・東京の順だった。また中国の国家余裕局(韓国の観光公社)はこれらの都市に加えて、台北・香港・シンガポール・プーケット・済州道(チェジュド)・バリ・大阪を今年のメーデー連休10大旅行先として集計したと、中国新聞網(電子版)が報じている。余裕局は中国人観光客がこれらの都市を選んだ理由として、5時間以内の短い飛行時間と相対的に便利な意思疎通を挙げた。

 ただ、最近では富裕層を中心に冒険的な要素がある旅行先や遠隔地を選択するケースも増えてきたようである。欧米諸国はいうまでもなく、アフリカや南米にも果敢に足を踏み入れるようになったのだ。中国人はどこにでもいると言われるゆえんである。

 こびを売ってまで“爆買い”取り込みたい?

 海外を旅行すると、犯罪に巻き込まれる危険が確実に高まる。それは中国人も例外ではないようだ。欧州諸国でも、中国人観光客が犯罪被害を受けるケースが近年増えているという。そんな中、毎年300万人以上の中国人観光客が訪れるイタリアでは5月から、ミラノとローマで制服姿の中国人警官4人が街頭で巡回し、地元警察と情報を共有して中国人観光客のトラブル解消や犯罪被害の報告などを手助けする制度が始まった。CNNや中央日報など複数のメディアが報じている。

 イタリアのアルファノ内相は記者会見で、「合同巡回査察は中国人観光客に安全だという認識を高めてもらうために用意した欧州初のサービス」と強調した上で、「効果が良ければほかの都市に拡大する予定」と明らかにした。

 中国人観光客が世界各地の旅先で昨年使った金額は24兆円以上にのぼったという。日本や韓国などは言うに及ばず、世界中で“爆買い”繰り広げているのだ。イタリアもこびを売ってまでその恩恵を受けたいのだろう。

 しかし、考えてみると恐ろしい話だ。中国公安部の管轄下にある警察組織の人間が外国の街を巡回査察するのである。中国政府には別の目的があるのではないかと、勘ぐってしまう。