中国「安倍政権は卑劣な下心を秘めている」 南シナ海問題念頭の声明に反発
【北京=川越一】中国外務省の陸慷報道官は11日の定例記者会見で、先進7カ国(G7)の外相が中国を念頭に、東シナ海や南シナ海での一方的な現状変更の動きに懸念を示し、国際法に基づく秩序維持を訴えたことについて、「G7が今後も国際社会で重要な役割を発揮したいと思うなら、事実に基づいて正しく行動しなければならない」と述べ、「海洋安全保障に関するG7外相声明」に反発した。
中国はG7外相会合で南シナ海問題が議論されることに反対してきた。王毅外相は8日、訪日前に北京に立ち寄ったドイツのシュタインマイヤー外相と会談した際、「一部の国が政治的な理由から、南シナ海にいざこざを引き起こし、緊張を作り出すことを認めない」と、日本や米国を牽制(けんせい)していた。
陸報道官は11日の会見で、G7の外相が広島市の平和記念公園を訪れたことを受け、広島と長崎への原爆投下にも言及。「軍国主義の幻想を徹底的に打ち砕くと同時に、日本の一般市民に大きな犠牲を与えた。無辜(むこ)の市民が受けた苦痛は同情に値する」と述べた。
ただ、報道官は「軍国主義の道を再び進まないという日本政府の決心を世界に向けて表明することが、広島での外相会合開催の目的であることを望む」と続け、声明への不快感をにじませた。
中国国営新華社通信は10日配信の評論記事で、南シナ海情勢を話し合うことを求めた安倍晋三政権を「卑劣な下心を秘めている」などと名指しで批判。さらに、「安倍氏は力の限りを尽くして、国民に日本周辺の至る所に危機が潜んでいるとの錯覚を生じさせ、軍拡を進めるための世論環境を作り上げている」などと、首相個人も攻撃した。
新華社通信は、「他のG7メンバーは中国との協力や意思疎通を犠牲にして、日本が議題を乗っ取ることに興味を持ち、中国の主権問題に巻き込まれるべきではない」とクギを刺していた。日本の思惑通りに外相会合で南シナ海問題に踏み込み、連携を強化することへの強い警戒感がうかがえる。
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