エンジンとは関係ないが、ハンドルが非常に軽いこともスポーティーさを感じにくい大きな原因だ。せめてスポーツモードに切り替えた時だけでも、もう少し重さが感じられるようにならないか。
ISというのはIntelligent Sportの頭文字だったはず。BMWの3シリーズを目標に、コンパクトなスポーティーセダンとして開発がスタートしたと記憶している。初代モデルは日本ではアルテッツァとして発売された。レクサスの国内展開が始まった2代目からは高級路線を前面に押し出して(値段も倍になって)、現行の3代目に至る。一日本人のクルマ好きとして、ISには高級でありながら、スポーティーでもあってほしいと個人的には思う。レクサスとしては、スポーツクーペのRCがラインナップされた現在、ISはサルーン寄りのクルマにしていくつもりなのかもしれないが。
とにかく、ISの走りは徹底してスマートだった。荒っぽいところを見せない。と言って、けっして遅いわけではない。クルマの流れをリードできるだけの加速の良さはしっかりと備え、実際にいい感じで加速しながらも、そのスポーティーな気配は消され、キャビンの中はあくまでも穏やかさを保つ。スポーツモードに切り替え、変速プログラムが高回転寄りになっても、その印象はさほど変わらない。8速の多段ATは、変速ショックも皆無で、タコメーターを見ていなければいつ変速したのかもわからないほどだ。不思議なもので、この現行ISのジェントルな走りに慣れてくると、元気よく走ろうという気にならなくなってくる。それよりも、ゆったり流れに身を任せてクルーズするほうが「らしい」と思えてくるのだ。積極的な運転操作に誘うリニアな走り味よりも、運転経験の多寡にかかわらず誰でも安全に快適に速く走ることができる質の高いイージーさを採る。それがプレミアムブランドたるレクサス流なのかもしれない。