イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」がメンバーに利用を推奨している携帯用メッセージアプリ、テレグラムのロゴマークと、イスラム国のロゴが記されたスマートフォンの陰影。暗号化を制約すればテロリストをあぶり出すのも容易になるとは限らない=2015年11月19日、ボスニア・ヘルツェゴビナ・ゼニツァ(ロイター)【拡大】
パリ同時多発テロを受け、スマホなどによる通信の暗号化技術が欧米で議論の的となっている。治安当局はテロ組織に悪用されているとして暗号化に制約をかけるべきだと主張しているが、当局の監視を嫌う人々は今回のテロを口実に規制強化を図ろうとしているとして、反発している。実際、パリ同時多発テロの実行犯らは暗号化されていないスマートフォンのショートメールで連絡を取り合っており、暗号化技術がなかったら治安当局が今回のテロを防げたとは言い切れない。テロ対策とプライバシーのどちらを優先するか-。民主主義の根幹ともかかわる問題だけに、是非の判断は容易ではない。
「シリコンバレーは政府を敵視すべきではない。官民が一緒に知恵を絞って解決策を探るべきだ」。来年11月の米大統領選の民主党最有力候補、ヒラリー・クリントン前国務長官(68)は19日、ニューヨークでの演説で、暗号化技術に対する当局の懸念に応えるようIT業界に促した。米メディアによると、アップルとグーグルはパリ同時多発テロを受けて、スマートフォンの暗号の解読手段を用意するよう当局から改めて要請されており、こうした事情を背景にクリントン氏はリベラル層の反発を覚悟の上で、安全保障分野での強さをアピールしたとみられる。