調理者との程よい距離感
そんな僕が偶然手に取った本が『長尾智子の毎日を変える料理』だった。ぱらぱらと数ページをめくり、まえがきも飛ばして1章のタイトルが目に入ったのだが、「おいしい酒の肴は、毎日のおかずに、明日のお弁当にも」と書いてあった。おや、この人は酒呑みにも優しい人なのだろうか? 仲間だろうか? それが僕の第一印象だった。
実際の彼女は呑兵衛ということもなく、ちびりちびりと一杯程度ということが『長尾智子の料理1、2、3』というエッセーを読んで明らかになったのだが、なにせ「酒に合うものを作ると、たいてい、おかずにしてもおいしい」といってくれる人だ。勝手にシンパシーを感じ、試しにと彼女のレシピにある酒のつまみを試してみた。月に1、2回くらいだけれど。
まずは「おつまみとおかず」の1章から、「トマトとパプリカの目玉焼き」や「たらのスクランブルエッグ」に挑戦。すると、挑戦と書いたものの何ともあっけなく簡単に酒の肴ができてしまった。しかも、うまい。自分でつくった料理というのは悪くないものだ。存外うまく進んだことにすっかり調子をよくした僕は、いくつかのレシピを続けてためしてみた(僕は「たこのスモーク風味」が十八番になりました。結局、肴ばかりですね)。