ニッポン放送「ラジオビバリー昼ズ」のパーソナリティー高田文夫センセイの本「誰も書けなかった『笑芸論』 森繁久彌からビートたけしまで」が発売になりました。この本、何がすごいってエピソードは全て体験したこと、生で見たものであること。しかもそのひとつひとつがおもしろくて宝物のようにキラキラしてるんです。
例えば森繁久彌さん。当時小学生の高田少年にとって森繁さんはスターであると同時にご近所さん。森繁映画3本だてを見たあと、仲間たちと森繁さんちに行って、柿やらを盗んでは「おーい、社長いるか!」とやると、森繁さんが「またお前らか」とおっかけてくれたとか。
例えば渥美清さん。番組で渥美清さんにインタビューし、お礼をすませ帰ろうと10歩ほど進んだとき「ちょっとちょっと兄さん」と呼びとめる渥美さん。小走りに寄っていく高田さんに「兄ちゃん売れるよ」と耳うちされたとか。高田センセイ29歳。漫才ブームの2年前。
とにかく軽妙な語り口。いっきに当時の「東京の空気」や笑芸人の様子を紹介していきます。とりわけ子供時代の話が素晴らしいなぁ。「笑いの才能を育むに贅沢(ぜいたく)すぎる環境」で育つ高田少年の目で見た「東京」や「家族」の様子が語られます。ぼくはこんなに少年の日常と芸人の世界がリンクしながら、みずみずしく語られる文章を他に知りません。